顔を合わせると、ワインの話題になる。ワインを飲めば、どのように造ったのかが議論になる。
「最近栽培を始めたブドウの品種の様子はどうか」、「別の酵母を使ったらどんな風になるだろう」山梨県内のワイナリーの後継者が結成した研究会「アッサンブラージュ」のいつもの光景だ。月1回ほど集まり、深夜まで白熱したワイン談議を繰り広げる。昨年、加わった蒼龍葡萄酒(そうりゅうぶどうしゅ)(甲州市勝沼町)の鈴木大三さん(31)は「一人で悩んでいたことも気軽に相談できるようになりました」。
結成は00年。当時、県ワインセンター所長だった小宮山美弘さん(61)が旗を振った。県内では明治期からワイン醸造が始まり、80余りのワイナリーが集まる。造り手も3〜4代目となり、大学で醸造学を専攻したり、海外へ留学したりした本格派志向の若手も増えたが、経験が共有されていないと感じていた。
この提案に賛同し、30〜34歳の8人が集う。名称はワインのブレンドを意味するフランス語に由来し、個性ある醸造家が集まり、切磋琢磨(せっさたくま)するという思いを込めた。
初代会長の金井醸造場(山梨市)の金井一郎さん(34)は「理想と現実のはざまにいる後継者が悩みを打ち明けられる場になればと思った」。ブドウ産地ゆえの課題がある。上質なワイン醸造には良質なワイン用ブドウの栽培、一刻を争う収穫後の処理が不可欠だ。地元農家は生食用を優先させがちだった。
研究会は、栽培委託契約に関する勉強会を開き、ワイン用の栽培拡充を図るほか、長野、山形といった産地の若手醸造家との交流会を企画して、よその事例も学ぶ。
もちろんワインの味は、醸造過程での酵母の種類や樽(たる)の違い、温度管理にも大きく左右される。
山梨ワイン(甲州市勝沼町)の野沢たかひこさん(32)はフランスから帰国後、自社の畑で南フランス系ワイン専用品種を中心に30種余りを試験的に栽培中だ。
ダイヤモンド酒造(同)の雨宮吉男さん(33)もボルドーとブルゴーニュで約3年間、ワイン造りを学んだ。マスカット・ベリーAの醸造に、ブルゴーニュの初期低温発酵の手法を採り入れ、留学中に「甲州種のブドウに合う」と見初めたフランス・ムルソー村の樽を仲間と共同購入して使う。
「何げない会話から海外の手法も学べる」と、ドメーヌ久(甲府市)の久保寺慎史さん(32)。山梨大で醸造学を学び、大学とのパイプを生かして大学の研究者を招くなど、会の運営に貢献する。
会として、一つの目標を掲げることはしていない。「自由だからこそ、個性がのばせる」と、アルプスワイン(笛吹市一宮町)の前島良さん(31)は言う。4代目の現会長、麻屋葡萄酒(甲州市勝沼町)の雨宮一樹さん(30)は「各ワイナリーが独自のワインを確立する、それが山梨ワインの活性化につながると確信しています」。